2024年1月から新NISAがスタートして、投資がより始めやすくなりましたね。
また、2024年12月からiDeCoの年間投資枠が一部引き上げられ、今まで以上に税金の優遇を受けやすくなります。
さて、新NISAとiDeCoは、どちらも税金が優遇される制度ですが、どちらを優先的に使うべきなのでしょうか。
新NISAとは
新NISAは2024年から始まった、投資して得られた利益に税金がかからなくなる制度です。
我々は、給与や年金などのお金を受け取るときに、所得税・住民税という税金を支払っていますね。
これは、投資においても同様で、投資によって得た利益を現金で受け取る時に、その利益に対して一律で20.315%という、そこそこの額を所得税として納めなければなりません。
ところが、新NISA口座を経由して投資を行うと、この税率が0%、すなわち無料になるのです。
さらには、税金を納めないから確定申告も不要になり、投資がよりシンプルで簡単になりました。
iDeCoとは
iDeCoは個人型確定拠出年金という年金の制度です。
iDeCoもNISA同様、投資によって得た利益の税率が0%になることは同じですが、あくまで年金の制度であるため、投資した金額を所得控除に加算できたり、原則60歳まで引き出せなかったりといった、一長一短な面があります。
新NISAとiDeCoはどっちが優先?
結論から申し上げると、以下のとおりです。
60歳まで引き出す必要のない資金を合計1,800万円以上投資する場合、退職所得控除と公的年金等控除の範囲内であれば、iDeCoを優先的に埋め、余った分を新NISAに入れるのが、得である。
なんだかややこしいですが、わかりやすく解説していきたいと思います。
まず、新NISAとiDeCoの違いについて、重要なところを表にまとめてみました。
新NISA | iDeCo | |
---|---|---|
資金の引き出し | いつでも可能 | 60歳まで原則不可 |
投資可能額 | 1,800万円 | なし |
年間投資枠 | 360万円 | 27.6万円(厚生年金のみの会社員の場合) |
所得控除 | なし | あり |
受け取る時の課税 | なし | 一時金で受給:退職所得控除を超えると課税 年金で受給:公的年金等控除を超えると課税 |
新NISAは、投資した商品を解約すれば、いつでも資金を引き出すことができます。
しかし、iDeCoは年金の制度であるため、一度投資をすると、原則60歳まで資金を引き出すことができません。
『長期・分散・積立』という観点において、むしろ引き出せなくなることは、将来の資金を安定して確保できるので利点ですが、人生というのは何が起こるかわかりません。
もし緊急時に必要になるかもしれないお金は、iDeCoには入れないようにしましょう。
投資可能額について、新NISAは1,800万円、iDeCoはなしとなっています。
ここで重要なのが、新NISAは上限があるということです。
もし投資資金に余裕のある方で、新NISAの1,800万円の投資可能額全てを先に埋めてしまった場合、それ以降はNISAでの投資ができなくなり、iDeCoの27.6万円/年(厚生年金のみの会社員の場合)しか非課税での投資ができなくなってしまいます。
それだったら、iDeCoを優先的に埋め、余った分を新NISAに入れた方が、新NISAを使える期間が長くなるため、結果非課税で投資できる金額が多くなるので、得ということになりますね。
さらに、もう一つiDeCoを優先的に使うべき理由として、投資額が所得控除になるという点が挙げられます。
先に申し上げたとおり、我々は給与を受け取った時点で所得税を払っています。
日本人の年収の中央値である年収360万円で、所得税率が5%の例で考えると、新NISAの場合、給与受取時に5%の所得税を払った後に投資することになります。
一方iDeCoは、投資額が所得控除になるため、給与受取時の所得税がかかりません。(厳密には給与から天引きされた後年末調整で戻ってきます)
新NISAは非課税というイメージが定着していますが、給与の受取までさかのぼると、完全なる非課税ではないのです。
新NISAとiDeCoでは、投資の終わり方にも違いがあります。
新NISAは、好きなタイミングで売却することができ非課税なので、出口戦略を考える必要はありません。
しかし、iDeCoは年金の制度であるため、60歳以降に、一時金として一括で受け取るか、年金として分けて受け取る必要があります。
問題なのは、一時金はと年金は、決められた控除額を超えてもらうと、所得税を払わなければなりません。
例として、退職金2,000万円、一時金(iDeCo) 600万円、勤続年数30年間の人が、退職金と一時金(iDeCo)を一緒に受け取った場合の所得税を計算すると以下のようになります。
退職所得控除:800万円 + 70万円 x (30年 – 20年) = 1,500万円
退職所得:(2,000万円 + 600万円 – 1,500万円) x 1/2 = 550万円
所得税:550万円 x 20% – 42万7500円 = 67万2500円
つまり、せっかくiDeCoが非課税だからと投資しても、受け取り時に67万2500円の所得税を払わなければならならないということです。
これはあくまで一例ですが、iDeCoを利用するならば、自分の勤続年数や退職金を当てはめて退職時の所得税を計算し、出口戦略も考えておく必要があります。
勤続年数は長い方が、退職金は少ない方が、所得税がかからなくなり、iDeCoを利用する上では有利ということになります。
退職金と一時金(iDeCo)を一緒に受け取る場合の勤続年数は、退職金を出す会社の勤続年数か、iDeCoの加入年数のどちらか多い方になります。転職をすると勤続年数はリセットされますが、iDeCoの加入年数はリセットされません。
60歳で一時金(iDeCo)を、65歳で退職金を受け取った場合、退職所得控除が2回利用できます。
まとめ
60歳まで引き出す必要のない資金を合計1,800万円以上投資する場合、退職所得控除と公的年金等控除の範囲内であれば、iDeCoを優先的に埋め、余った分を新NISAに入れるのが、得である。
iDeCoを利用している若い人は、投資時のことは考えていても、出口戦略まで考えている方は少ないと思います。
それもそのはず、働き方が終身雇用から転職の時代へと変わり、以前のように自分が退職する時のイメージを明確に持つことは難しくなりました。
さらには、新NISAやiDeCo改正と、税制の制度が目まぐるしく変わってゆくという現状を踏まえても、今後退職金や年金の制度が変わらないということはまずないでしょう。
現時点では上記が結論ではありますが、今後の制度の改正があった場合、投資方法を変えていくことも必要です。
そのためには、投資に関する情報にアンテナを貼り、常に情報をアップデートしていかなければいけませんね。
このブログでも、気になる情報があれば、紹介していければと思います。
それでは、またお会いしましょう。